君が好き





笑ってくれれば。

なんてことを勝手に考えてたけど。
加藤はとっくに幸せを見つけてたし。


俺が勝手に思っていた
君の透明な壁も。



きっとただの人見知り、だよな。





…だから、加藤。










「じゃあな」









初めて会った日は、わざと加藤と同じ方面に進もうとした。

だけど今は違う。

ちゃんと、違う方向に進んでいるよ。


自分の方向に。
加藤とは逆側にある、自分の道を、進んでいるよ。










ほんの少し、
鼻がツーンとするのが、どうにもダサいしかっこ悪い。



よかった。
加藤と違う方向で。



こんなところ、見られなくて済んで。












――――まもなく一番ホームに…





アナウンスの声に前を向いたとき。


確かに、
風が吹いた。



まだまだ残暑が厳しいはずのこの時期に。



秋の風が、吹いたんだ。













そんで。





線路を挟んだ向こう側。

君が、居て















「会長、

頑張って、ください




もう、邪魔
しませんから」









叫ぶ君の頬には、
涙が光る。


なのに、
どうしてそんな笑顔なんだよ。








滑り込んできた電車は、

加藤と俺の最後の会話を。

俺が勝手に結ぼうとしてた加藤との赤い糸を。

最後の、最後の、勘違いを。















潔く、断ち切ってくれた。















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