君が好き




「それで、」

ずっと伏し目がちだった加藤の視線がこちらに向いた。

まっすぐ、射抜くような目がこっちに。






「会長に、会いました。」



すこし、勘違いしそうになる。


そんな風に微笑まれると。
さっきまでの惚気を、忘れそうになってしまうよ。





「お祭りのときに言いましたけど、
会長は、」

「春を運ぶ?」

「そう。」


ほらまた。
そんな笑顔で笑わないでくれよ。


忘れられなくなるだろ。




「久々に思ったんです。
母が死んでから、そんなこと考えたことなかった。」


…そうだよな、
きっとそうなんだよな。


俺はまだ家族全員元気で、
だけど、母親はもちろんあんな姉貴でも
家族なわけで。


失ったら、どれだけの喪失感だろう。


そんなときに加藤を支えたタカシが偉大なのはやっぱり当たり前だ。



「新しい街に来て、少しずつ歩けてるんだなって思いました

それもきっと、タカシが居たからなんだろうなって、そういう風にも」


「うん、わかるよ」


穏やかに笑ったつもりだ。
そんな俺を加藤はチラッと見てからまた俯く。


「それで。」




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