君が好き
だけど。
多分、失敗だった。
カップルを見ていれば
私たちもあんな風に見えるかも、なんて思ってしまう。
忘れたくない瞬間がたくさんありすぎて。
…忘れたくない。
失いたくない。
風船みたいにさ、
膨らみすぎた気持ちも弾けて消えればいいのに。
膨らむばかりで、存在感を増すばかりの気持ちは
一体どこへ向かうんだろう。
「加藤、
あれ乗らない?」
指さした先、
会長が笑って見つめるのは観覧車。
乗りたいって、思った。
いろんな理屈抜きに。
会長と、観覧車に乗りたいって。
「…綺麗」
キラキラ光る海。
斜め前に座る会長の視線を感じるけど
絶対、そっちは見ない。
優しい表情をしてる。
愛しいって顔に書いてるよ、きっと。
…そんな顔、見たらきっと、思いは、溢れてしまうから。