君が好き
「亜紀」
ゆっくりと呼ばれた名前に顔をあげた。
こう考えれば、
隆史はいつも大切そうに私の名前を呼んでくれていた。
私は、どうだっただろう。
「…考えさせて、くれない?」
考えて、時間をかけて、
それで答えはどんなものが待っているんだろう。
「…隆史、あの、私……」
「ごめん。わかってる。
分かってるんだ、けど。
気持ちを整理する時間を、ちょうだい」
私はいつも、周りに恵まれている。
寂しい顔をするのに、
私を責めたりは絶対にしない隆史。
ずっと、私を支えてくれた人。
本当に、私の決断は正しいのだろうか。
ホテルに帰る隆史の後姿に強く思った。
私は、いったいどうしたいの?
会長と、付き合いたいから隆史を振ったの?
ずっと支えてくれた人なのに。
それなのに隆史のことを…。
「あ」