君が好き
なんだか、不思議なもんだ。
昔は散々通ったとはいえ、
最近じゃ全く来なかった。
それなのにみんなが当たり前に笑って受け入れてくれて。
それこそ、ここには"壁"がない。
加藤は。
たとえばこういうときでも壁は崩さないんだろうか。
彼女の周りを囲う、透明の壁は…。
「あれ?」
「え?」
加藤のことを考えていた。
確かに考えていた。
「会長、何してるんですか?」
だからって、こんなこと、有り得るだろうか。
いや、有り得たんだよ。
「おぉ、加藤」
ニコニコと綺麗な笑顔を携えた彼女がそこに居て。
「あら、ゆうちゃん、彼女?」
丁度そこにタイミングよく現れたかずさん。
「いや、学校の後輩で…」
「こんにちは」
まだ動揺を隠せないまま
彼女を見れば
「イベントでもするんですか?」
と、にこやかに言う。
「そうなの、明日からお祭り」
何を動揺してんだ。
みんな学校帰りに通る道だろ。
最近はあの大型スーパーの方からみんな帰るけど、別にこっちを通っても駅には行けるし。