君が好き
昨日はびしょ濡れになった後、
しばらくはその場にいたけど寒くなってきて解散した。
楽しかった時間は、
本当、夏の夢のようで。
昨日の加藤は透明の壁を取り払っていた気がするけど、その壁を取り除くためのキーワードが“前住んでた街”なのが、やっぱり悔しい。
いつか、自分がそのキーワードになれれば、なんてことを思ってしまう。
本当に、ガラにもないことだけど。
「どうした?そんなに食い入るように‥」
「え?あ、いや、別に!ほ、ほら!懐かしいよな!」
「え?あぁ‥」
ポスターの前で立ち止まっていたのがミスだった。
マモルが来てしまった。
つか、なんなんだよこいつ。
なんでいちいち俺のところに来るんだよ、気持ち悪りぃな。
「へぇー、確かにいいなこのポスター。」
「え?」
驚いてそちらを見ればマモルが珍しく真面目な顔をしている。
「なんか、初々しい感じ。ほら、付き合う前のこう‥お互いに駆け引きしながら‥て、なんだよ、なんで真っ赤なんだよ気持ち悪りぃな!」
「あ、いやぁ‥」
付き合う前の、初々しい‥。
いや、違うって。
多分、加藤には‥‥。
多分?