君が好き
「あ」
破れてしまったそれに僅かに眉を寄せても
やっぱり加藤は幸せそうで。
大切なんだって。
大切な思い出なんだって言うのが、痛いほど伝わった。
「うわー!
かとちゃんダントツだー!」
「加藤も優一もダントツだな、ある意味」
「うるせ」
一つも入っていない俺の容器に比べて
赤にマダラに黒に、
色とりどりな加藤の容器。
「あ、2匹で」
嬉しそうに金魚を見つめる瞳がキラキラと輝くのを見ていれば、
やはり思いは増幅するばかり。
「ずいぶん嬉しそうですね」
とっとと次へ行く千田と山田の後をゆっくりと並んで歩く。
「嬉しいですよ、そりゃあ」
向けられた笑顔にトクンと胸がなる。
それが、やっぱり心地よくって。
「それは良かった」
究極的なことを言ってしまうと。
今この瞬間、隣に居られるだけでもう、大抵のことはどうでもよくなる。
幸せに色を買えるんだ。
「うわーおかーさーん!」