君が好き




穏やかな思いを突き抜けるように聞こえた甲高いその声。


なんだろうと辺りを見渡せば見つけた小さな姿に、意図せずとも足はそちらへ向いた。


「どうした?」

隣に加藤がいることも横目で確認しつつ低い目線に合わせるようにしゃがみ込む。


どうした?なんて聞くまでもない、迷子だろう。




「う、ひっく、おがーちゃんが…いない…」

予想通りの言葉に不謹慎ながら小さく微笑む。



「そっかそっか。もう大丈夫だからな。ほら、男が泣くなよ。」


目を真っ赤にして、
鼻水もダラダラで、

いったいどれだけ泣き続けたんだろう。


「ん?名前は?」
「だい、き…ひっく」

「そっかそっか。
よし、だいき、もう大丈夫だからな。」
少し手荒に頭を撫でて立ち上がる。


「迷子センターとかないかな?」

「うーん、あるとしたら広場のとこですよね」


2人で頷きあっている傍ら、
まだ泣き止まない、だいき。

参ったな。
思わずこぼした苦笑いに加藤がイタズラに笑って見せたかと思えば。


「だいきくん、これなーんだ?」


しゃがみ込んで少年の目の前に差し出した金魚。


「あ!お魚!」


キラキラと光るそれに
ビー玉みたいな目が光る。


「そー!だいきくん、お魚さんのとこ行った?」

「んーん!まだ!」

なんだろう。
非常に、不謹慎なんだけど。


なんというか。こう…




「ママと行く約束してたの?」

「ママがダメって言った」




子供と、加藤
っていうツーショットが、
凄く癒しすぎて…。



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