君が好き




…なぜだろう、と、たまに思う。


こうやって見れば
千田だってかわいいし、
今みたいな気を使うこともできる。

千田以外の誰かだって、
美人とか性格がいいとか、笑いのツボがあう、とか。


そういう人はたくさんいるのに。


どうして、加藤が好きなんだろう。




今思えば、
彼女に初めて会ったときから彼女は特別だったんだ。



駅のホームで始めて彼女を見たときから、ずっと。




「かいちょーは、」



届いた声にまた思考が途切れる。


「ん?」


千田の見慣れたその顔がほんの少しだけ揺らいでるようで。



だからだろうか。



「かとちゃんが、好きですか?」




千田のそんな言葉にも





「…うん、好きだよ……。」





なんにも揺らがずに
答えられたのかもしれない。






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