君が好き
「あ、ここの…ずれちゃってるのか」
こっちがそんなことを考えている間に加藤はミスを見つけている。
「なんでみんな引きとめなかったんですか?分担すればすぐだっただろうに。」
あくまで目線は資料に落としたままで加藤がそういう。
「なんか、言いづらくて。」
少し厳しい声色に肩を縮めながら答えてみる。
なんだ、俺、何ビビってんだよ。
「受験生なんですよ、あなた」
ビシッとシャーペンで指されながら咎めるようにそう言われまた肩を縮めた。
「…すいません」
ふわり笑った彼女との間に壁は感じない。
だけど。
「…」
ふと目線を落とした先。
携帯を見つめたとたんに出来てしまう
その陰の正体は、いったいなんだろう。
「加藤は、なんで戻ってきたの?」
「会長、明らかに変だったから。」
そんなことを簡単に言ってしまう加藤が好きで。
だけど、握るシャーペン、
見つめるケータイは痛いんだ。
遠くなったような距離が苦しい。
君が好きだからって、そんな単純な理由一つで
こんなにも心は揺らぐ。
俺の心は加藤が揺らしてるよ。
加藤、君の心は、誰が揺らしてる?