君が好き




「あ、ここの…ずれちゃってるのか」


こっちがそんなことを考えている間に加藤はミスを見つけている。


「なんでみんな引きとめなかったんですか?分担すればすぐだっただろうに。」


あくまで目線は資料に落としたままで加藤がそういう。

「なんか、言いづらくて。」


少し厳しい声色に肩を縮めながら答えてみる。

なんだ、俺、何ビビってんだよ。



「受験生なんですよ、あなた」


ビシッとシャーペンで指されながら咎めるようにそう言われまた肩を縮めた。


「…すいません」


ふわり笑った彼女との間に壁は感じない。
だけど。


「…」


ふと目線を落とした先。
携帯を見つめたとたんに出来てしまう
その陰の正体は、いったいなんだろう。


「加藤は、なんで戻ってきたの?」

「会長、明らかに変だったから。」

そんなことを簡単に言ってしまう加藤が好きで。

だけど、握るシャーペン、
見つめるケータイは痛いんだ。


遠くなったような距離が苦しい。
君が好きだからって、そんな単純な理由一つで
こんなにも心は揺らぐ。



俺の心は加藤が揺らしてるよ。

加藤、君の心は、誰が揺らしてる?






< 65 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop