続きは、社長室で。―愛と誠―


美味しいケーキのお店や可愛い洋服のこととか。どんな話をする時よりも本当に幸せそうに微笑むから、それがまた可愛くて仕方ない。


「羨ましいなぁ。東条さんみたいな素敵な人が彼って」


「か、彼なんかじゃないの。……私は、ただのお隣さんだから」

顔を真っ赤にして頭を振った蘭。けれど、そのあとは必ず悲しそうに笑う。


「でも私の幼馴染みなんて、銘柄も指定して明後日のバレンタインのチョコを要求してるよ?本当、図々しいよねぇ」


「ふふ、でも菫はいつも用意してるじゃない」

「もちろん、お返し目的にね!」

蘭が表情を曇らせるといつも、自分って非力だなと感じてしまう。


茶目っ気たっぷりに言ってみても慰めにもならないのに、それが精一杯だもの。



ちなみに東条さんは、彼女と主従関係にある日本屈指の名家の跡取り。


「東条さん、本当に蘭に優しくて羨ましいよ」


「ううん、違うの。……拓海は誰に対しても優しい人だから、」


“幼なじみなんて言葉さえおこがましいの”と彼女は口にするけれど、私は違うと思う。



「でも、蘭と会えて嬉しかったと思うよ?」


「うん、……私は幸せだから、……拓海もそうだと嬉しいな」


ニコッと天使のような微笑みを返してくれる蘭こそ、親友として本当に心の優しい人だと思う。


< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop