続きは、社長室で。―愛と誠―
美味しいケーキのお店や可愛い洋服のこととか。どんな話をする時よりも本当に幸せそうに微笑むから、それがまた可愛くて仕方ない。
「羨ましいなぁ。東条さんみたいな素敵な人が彼って」
「か、彼なんかじゃないの。……私は、ただのお隣さんだから」
顔を真っ赤にして頭を振った蘭。けれど、そのあとは必ず悲しそうに笑う。
「でも私の幼馴染みなんて、銘柄も指定して明後日のバレンタインのチョコを要求してるよ?本当、図々しいよねぇ」
「ふふ、でも菫はいつも用意してるじゃない」
「もちろん、お返し目的にね!」
蘭が表情を曇らせるといつも、自分って非力だなと感じてしまう。
茶目っ気たっぷりに言ってみても慰めにもならないのに、それが精一杯だもの。
ちなみに東条さんは、彼女と主従関係にある日本屈指の名家の跡取り。
「東条さん、本当に蘭に優しくて羨ましいよ」
「ううん、違うの。……拓海は誰に対しても優しい人だから、」
“幼なじみなんて言葉さえおこがましいの”と彼女は口にするけれど、私は違うと思う。
「でも、蘭と会えて嬉しかったと思うよ?」
「うん、……私は幸せだから、……拓海もそうだと嬉しいな」
ニコッと天使のような微笑みを返してくれる蘭こそ、親友として本当に心の優しい人だと思う。