続きは、社長室で。―愛と誠―
確かに在学中の東条さんは、すごく格好よくて文武両道なのに謙虚な人となりだからファンはとても多かった。
何より、彼の継ぐ東条家は世界にまで名を馳せる名家。
必然的に彼の“向こう”を望んで、打算から近づく人も少なくはないと思う。
だからこそ、純粋に彼自身を見つめてきた蘭のことが愛おしくて堪らないはず。
――それでも、これは他人が口出ししてはいけないこと。
この世界に身を置く限り、各々に事情がある。それは私も同じでよく分かるから、出来る限り蘭の傍にいたい。
以前、東条さんのファンの上級生に彼女が囲まれた一件がきっかけかもしれない。
何よりそこへ助けに来てくれた東条さんの真剣な表情が、彼の想いを物語っていたから。
蘭が本当に笑える日が訪れるまで……、今はいない東条さんの代わりに彼女を守ると決めたの。
「……菫?どうしたの?」
「あ、ううん、何でもない!」
「菫、危ないよー!」
きょとんとする蘭の腕を引っ張ると、慌てて階段を駆け下りていく。
純粋なのに頑固な性質で、おっとりしているのに心が強い蘭と出会えて、ほんとうに良かった……。