瑠哀 ~フランスにて~
――――殺される………。



 この男は自分を殺しても、何も感じないのだろうか。

 なんの感情もなく、せせら笑っているように見える。



――――狂ってる………?!



「ケイン。やめるんだっ!!」



 ガッと、突然、男の手が引き離されて、瑠哀はゴホゴホとむせながら、肩で息をする。

 首に手を回して自分が解放されたことを確かめた。



―――もう一人の若い男…?



「何をしているっ。くだらないことをするな!」

「うるさいっ!」

「僕の言うことが聞けないのか?

自滅したいなら、勝手にするがいい。

くだらないことで足を引っ張るな。

もう一度聞く。僕の言うことが聞けないのか?」



 その男はかなり高圧的な命令口調で、ケインと呼ばれたあの男を睨んでいる。

 ケインと呼ばれた男は苦々しく顔をしかめ、フイ、と横を向いた。



 その男は瑠哀に向き直って、手を取りその甲にキスをする。


「失礼をしたね」


「―――ルイっ!!」


 誰かが自分を呼ぶ声がする。だが、この目の前の男達から目を離すわけにいかない。
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