瑠哀 ~フランスにて~
「僕からの忠告だよ。

あまり出しゃばった真似はしない方がいい。

僕はフェミニストなんだ。

君のように美しい女性が苦しむのは見たくない」



 一体、何だったのだろう。でしゃばった真似?邪魔?

 ―――と言うことは、あの青年も、ケインに加担しているのだろうか。



「ルイっ!」


 朔也が心配そうにこっちに駆けてくる。


『ルイ、大丈夫?』


 瑠哀は、ほう、と一息つき、


『大丈夫よ』


と答えた。


 あの男達が去って行った方を睨んでいたが、手を上げて壁にその手をこすり付けるようにした。


『手袋をはめていていい点は、嫌な奴にキスされても少しは我慢できると言うことね。

―――ごめんなんさい、心配をかけたみたいで』

『何かあったの?』

『いいえ、何でもないわ。ただの、挨拶よ』


 行きましょう、と言いかけた時、グイッと、肩を引き寄せられた。


『ルイ、本当に何もないの?

そういう顔をしている時の君は、必ず何かある。俺には話せない?』


 朔也の顔が間近にあって、心配そうに瑠哀を覗き込んでいる。


『…大丈夫よ。ありが――』


 とう、と言いかけ、朔也の視線がある一点に集中しているのに気付き、アッと、思わず唇を噛んだ。
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