瑠哀 ~フランスにて~
「なに?お前にそんなことを言われる筋合いはない。小娘が偉そうな口を叩くなっ」

「小娘だろうとなかろうと、あなたには関係ありません。

ここは私の友人の家です。好きにしていい、と承諾も得ています。

私が出て行けと言って、誰も止める者はいません。

偉そうな口を叩かないほうがいいのは、どちらだと思いますか?

ユージンに会い来たのでしょう?

私にその態度は通用しません。

ここでは、私に裁量権があるということを忘れないでいただきたいですね」


 瑠哀は軽蔑も露な目でマーグリスを見下しながら、頭ごなしに言い捨てる。


 マーグリスはクッと顔を引きつらせ、小娘に恥辱された怒りをどうにか押さえ込んだ。


「ここに一人で来たことで、少しはあなたを見直していたのに、

やっぱり聞くに劣らず、最低の人間だったようですね。

あなたの息子が愛想を尽かして家を出たのが、よく判る。

彼女が奪ったのではなく、彼があなたを見捨てたのよ。

そんなことも判らないの?」


 瑠哀は屈んでいるマーグリスのところに行って、冴え冴えとするほど鋭く光っている冷たい目でマーグリスを見下ろした。


「自分の地位と見栄ばかりを気にしてきたあなたに、何が残されているの?

たった一人の息子はあなたを捨て、そして、初めて会う唯一の孫には嫌われる。

ここまでされても、あなたの守ろうとしているものの方が大切なの?

あなたの周りには、金に目の眩んだ亡者ばかりで、信じることができる人間などいないのでしょう?

そいつらの一人が彼らを狙い始めた。

唯一の孫を犠牲にしなければならないものって、一体、なんなのかしら?」
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