瑠哀 ~フランスにて~
『俺達は、正当にここにいることを承諾されている。

君がどう言おうと、もう止められないよ』


 朔也は優しく微笑んだ。


『……あなた、一人なの?』

『ピエールも来ている。隣にいるよ』



 瑠哀はもう一度溜め息をついて顔を上げるようにした。

 ゆっくりとドアのどころに歩き出して、そこから奥の部屋で椅子に座っているピエールを見る。



 ピエールは腕を組んで、冷ややかに瑠哀を見ていた。


 瑠哀はピエールのところにゆっくり歩いて行った。


「僕が邪魔だって?」

「……すごい、邪魔。

あなた達がいたら、私のことを全て見透かされてしまうから。

あなた達に心配されたら、決心が鈍ってしまう。

見えないだろうけど、これでも、少しは怖気ずく感情もあるのよ」

「じゃあ、やめる気になったわけ?」

「やめられないわ。私は――気に入られているみたいだから。色々と、ね」


 瑠哀は目を動かして寝室を指すようにした。


 ピエールは訝しんで立ち上がり、寝室に歩いて行った。朔也もその後を追う。


 瑠哀はゆっくりと戻り、ドアに頭を寄りかけて腕を組んだ。


「どうやら、私は快く受け入れられたみたいなの。

洒落たことをしてくれるわ。

これで、なにがなんでも手を引くことはできなくなった」
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