瑠哀 ~フランスにて~

-2-

 三人は隣の客室に移って、椅子に座り直した。


「君に手紙が来てたから、ここに持ってきたよ」



 ピエールはスーツの内ポケットから封筒を取りだし、瑠哀に手渡した。

 それを受け取って、瑠哀は裏返して差出人を確かめようとした。



「なにも書いてないよ」


 そういうピエールの言葉に内心首をかしげながら、その端を破って封筒を開けた。


 中から出てきたのはケーキの形のカードで、そっとそれを開くと音楽が流れ出した。


 ♪タンタタンタン~


 少し驚いたような瞳が、その音楽と共に嬉しそうな笑みに変わる。



 “   誕生日おめでとう!!
     遠い異国で、誰もこの歌を歌ってくれる人がいないだろう
     から、俺が歌ってあげる。
     それと、心ばかりのケーキもね。
     残り少ない休暇楽しんでおいで。会えるのを楽しみに待っ
     てる。
                  Lots of Love from KAZU  ”




 カードを読み終えた瑠哀は何ともいえない嬉しそうな表情を見せ、それをゆっくりと閉じた。


「…誕生日…、だったの?」



 朔也は初めて聞いた、というふうな驚きを見せて、瑠哀に聞き返した。

 瑠哀がそれを答えようとした時、ピエールも横から口を挟んできた。



「いつ?」

「十日…だったの」

「十日っ?!」


 二人が同時に言う。
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