瑠哀 ~フランスにて~
「十六の女の子がたった一人でフランスに来る。

それだけじゃなく、彼女にはパトロンもいて、

ここに来たばかりだと言うのに求婚者までいる。

―――君は、ただの女の子じゃないようだね。

驚いたよ」

「あら、あなた達ほどじゃないわ。

ピエールもサクヤも、ただの青年じゃないでしょう?

その年で数百億ものお金を自由に操ることができるピエールと、

マーグリスを説得するだけの何かがあるサクヤ。

特に、サクヤは並の学生じゃないようだし」


 瑠哀はチラリと横を見るようにした。


「まあ、三人とも少なからず事情があるみたいよね。

そんな三人がパリで知り合うなんて、すごい奇遇だわ。

そう思わない?」

「そうだね。ものすごい偶然かもしれないよ―――」



 ピエールは椅子の背に寄りかかって、深く息を吐いていた。


 朔也も脱力したように肩を下ろし、くしゃっと、頭をかき交ぜた。



「すごい偶然が重なって、偶然、君の誕生日を知ることになった。

これも、すごいね。

だが、その偶然に感謝しなくちゃいけないな。

これで、俺達は君から離れてはいけない理由ができた。

君がどう言おうと、君は未成年だ。

俺もピエールも一応成人しているから、

ここにいる間は、君の保護者にあたるんだろうね。

無下にはできないよね」
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