瑠哀 ~フランスにて~
「うん、もちろんだよ。ぼくはね、おとこのだから、つよいんだよ。

ママンは、おとこのこはつよいから、なかないんだよ、っていってたもん。

ぼくね、ママンのそばにいるよ。

ルーイがかえってくるまで、ずーっといっしょにいるから、しんぱいしなくていいからね」



 ユージンは瑠哀の膝の上で真剣な顔を見せて、瑠哀の目を覗き込んだ。

 瑠哀は優しく微笑んで、そのユージンの頬にキスする。



「じゃあ、ユージンにママンをお願いするわね。

さあ、ママンのところに行ってあげて。

ママンは一人で怖い思いをしてるかもしれないから」



 ユージンは、うん、と大きく頷いて、瑠哀の膝から飛び降りた。

 またね、と言って、走って部屋から出て行った。



 瑠哀はユージンが去った後ろ姿を見送って、小さく溜め息をこぼした。


「セシルはそんなに怯えているのか?」


 朔也が静かに瑠哀に問う。


 瑠哀は浮かない表情をして、目線だけを朔也に上げる。


「最悪よ。

ちょっとした物音にもビクビクしている状態なの。

いつも蒼ざめた顔をして、眉間にしわを寄せているわ。

―――私のせいかもしれなくて………」



 瑠哀は膝の上に乗せた手に頭を乗せて、辛そうに眉を寄せた。



「ケインがユージンを狙うのは、マーグリスの財産を横取りされたくないからだ、と伝えたの。

だから、セシルも危ない、と言うのもね。

もし、マーグリスがユージンを正式に孫として認めたら、

誰が何と言おうとセシルはその後継者になる。

だから、セシルもユージンと同じように狙われる可能性がある…と話したの…」
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