瑠哀 ~フランスにて~

-5-

 瑠哀が屋敷に戻って来ると、キーン、と耳を突き刺すような音がした。

 それと同時に、悲鳴が聞こえる。



 瑠哀はハッと身を硬くして、顔を上げた。

 すぐに、その音の聞こえた方に走り出す。



 たしか、あれは書斎からだ。



 瑠哀は書斎のドアをノックもせずに開けた。

 中に駆けて行き、一瞬、身をすくめる。



 マーグリスが足を抱え込むように倒れていて、そのズボンから血が滴り落ちている。

 その横では、血の気を失った顔で、両手を顔に当て震えているセシルがいる。



 その見ている方向に目を向けて、瑠哀は叫んだ。


「ユージン―――っ!!」



 ユージンが全身をガタガタと激しく揺らせ、泣きそうな顔で立っていた。

 その手に拳銃が握られている。



 後ろでバタバタと駆けて来る足音が聞こえ、誰かが中に走りこんできた。


「ルイ、これは―――?!」



 朔也は足を止め、倒れているマーグリスを認める。

 横を向くとユージンが向けて呆然としたように立っていた。



「ユージン――!!」


 朔也は一歩ユージンに近づこうとして、ユージンが叫んでそれを止める。


「こないでっ!!ぼく……ぼく、こんなつもり…じゃ、なか―――」


 ユージンの腕が激しく震え、その銃が上がったり下がったりしている。


「ルイ―――!」
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