瑠哀 ~フランスにて~
「そうね……。

ピエールの言う通りかもしれないわね。

私…、明日の朝、マーグリス氏ともう一度よく話してみるわ。

何があったか、彼から聞くのが一番だと思うから」

「それがいいね。

君なら、彼と話せると思っているよ」

「そう思う?」


 うん、と朔也は優しい色の瞳で静かに瑠哀に頷いた。


 瑠哀は小さく笑んでいた。


「それより、食事はどうだったの?

それに値するだけのものは、貰ったんだろうね。

そうでなければ、あの男もただでは済まないだろうよ」



 ピエールは浅く笑いながら、朔也に軽く視線を送る。

 朔也はそれで思い出したようにきつく眉を寄せ、むう、とした表情になる。



 瑠哀は苦笑いしながら、テーブルの上の封筒を取って、投げるように朔也に渡した。

 朔也はその中から書類を取り出し、パラパラとめくりだす。



「ケインが、なぜこんなにまでしてマーグリスの財産問題に関与するかが判ったわ。

彼は養子であって、養子でないんですって。

マーグリスが彼を養子にする、と言っただけなの」


「ちょっと待て。それは、この養子裁定に関係があることか?」
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