瑠哀 ~フランスにて~
「早いわね。もう、そこまで読んだの?

―――それが、大いに関係あるのよ。

彼は法律上マーグリスとは何の関係もないの。

養子と公言されただけ」

「なんだって?

それじゃあ、マーグリスはただケインを養子にすると言っただけなのか?」

「そう、言っただけなの。

それが、マーグリスの経営方針なんですって」

「それ――は、また――。

噂によらず、ワンマンな男なんだな。まったく」


 朔也は呆れたように長い溜め息をはいた。


「法律手続きも済ませていない男を、よくも養子だと言ってくれるよ。

そのおかげで、ユージンは狙われ、君は傷を負う。

まったく、よくやってくれる」

「そうね。

ヴォガーは、マーグリス氏が気の向いた時に、

その法律手続きをするつもりだったと言っていたわ。

彼はそれほど急いでいるわけでもなかったし、おまけに、病弱でもないから。

それだもの、ケインは焦ったでしょうね。

なにしろ、彼はなんの権利もないんだから。

ユージンがこの家に来ただけでも、彼の地位が脅かされるわ」


「そうだな」

「それに、ケインの連れも判ったわ。

名前は、リチャード・ユーゴ。

その中に写真があるでしょう?」
< 154 / 350 >

この作品をシェア

pagetop