瑠哀 ~フランスにて~
 朔也はふうんと頷いてみせた。


「別に隠すつもりはなかったんだけどね、話す必要もないと思ったんだ。

俺はここではただの学生で、カズキコーポレーションとは関係なくいるから。

マーグリスの屋敷に来る為に、霞月の名前を少し利用させてもらった。

君は俺の大切な友人だから、あのまま黙って帰ることはできないしね」

「あなたに怪我をさせたら、恨まれてしまうわ。

次代の大事な跡取りだもの」


 朔也はくつくつと笑い出した。


「そんなことを気にする必要なんてないんだよ。

今のところ、俺は霞月の家を継いでどうのこうの、とは考えてはいないから。

―――これで、俺のこともばれちゃったかな。

ま、仕方がないか。

今度は、君の番だよ」

「私?私はただの女の子よ」

「そうかな?

たった十五・六の女の子にしては、君は世界情勢に詳し過ぎると思うけどね。

普通の女の子が、フランス支部のカズキコーポレーションの事まで知っている。

おまけに、ピエールのことも、ね。

ピエールは有名だけど、一般には知られていないことが多いんだ。

その上、彼の取り引きの話題は、滅多なことじゃなきゃ公で話されない。

新聞で読んだ、と言っても通用しないよ」
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