瑠哀 ~フランスにて~
Part 7
 瑠哀は静かにそのドアをノックした。

 ドアが開き、中からマーグリスに付き添っていたメイドが顔を出し、瑠哀の顔を見て確かめるように後ろを振り返った。



 マーグリスは瑠哀を中へ入れるよう、メイドに伝える。


 開かれたドアを通り抜け、真っ直ぐマーグリスのベッドに歩いて行く。


 マーグリスは瑠哀に椅子を勧め、ゆっくりと腰を下ろす瑠哀を静かに見上げていた。



「お早ようございます。ご気分はいかがですか?」


 瑠哀は抑揚のない静かな声で話す。


「あなたともう一度お話がしたくて、ここに来ました」



 マーグリスは全てわかっている、というふうに頷いた。

 そこにいるメイドに部屋から出るよう、言う。



「昨日、なにがあったのですか?」

「……昨夜、あの女にユージンを引き取りたいと話した。

そして、この屋敷から出て行くように伝えた。

当座に必要なものを全て渡すから、ここから出るようにあの女に話した」

「『あの女』ではなくて、『セシル』です。

名前があるのにそれを呼ばないのは、

セシルだけでなく、ユージンに対しても失礼です。

きちんと名前で呼んでください」



 瑠哀は自分より倍以上もある年齢のマーグリスを叱るようにした。


 マーグリスは静かに瑠哀の言うことを聞いていたが、目を閉じて小さな笑いを顔に浮かべた。
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