瑠哀 ~フランスにて~

-3-

『さて、どうしようかな』


 瑠哀は独りごちた。レストランを出て、さっき来た道を戻りながら、全く雲のかかってない晴天の乾いた空を見上げる。


 風一つ無く、澄み切った空から見える太陽は、ジリジリと街路のコンクリートやブロックを焦がしている。

 肌がひりひりと焼かれているのだから、かなり紫外線が強い証拠だろう。ヨーロッパ上空のオゾン層の穴は広がっている、と聞く。



『薄いカーディガンでもはおったほうが良さそうね。

今からモーテルに戻ってカーディガンでも取りに行くか。その後、エッフェル塔に行くと、

ちょうどいい時間帯になるわね』


 幸い、瑠哀の泊っている宿はかなりの街の中心よりにある。

 今からゆっくり市内を散歩しながら戻っても、そう遅くはかからないだろう。



『―――少し、でしゃばりすぎたかな……』


 歩きながら、さっきのことを思い出していた。

 初対面なのに、ズケズケと他人の心を探るようなことをしたのは、やはり少し行き過ぎではなかったか、と思う。



 つい、面白さにかられて、突っ込んで聞き過ぎてしまったようだ。


『ああいう時の私って、歯止めがきかないのよね……』


 だが、自分の行ったことはほぼ当たっていたことを知っている。

 あの青年は自分になど興味がなかった。

 彫刻のような端整な顔立ちは、感情にかけている無表情に近かった。



 それを上回る、氷のように冷たい瞳。

 あまりにきれいすぎて、一瞬、現実の人間と話しているのだろうか、と錯覚してしまうほど人間味を感じなかった。
< 16 / 350 >

この作品をシェア

pagetop