瑠哀 ~フランスにて~
 三人は、セシルの部屋に来ていた。



 セシルは憔悴しきった様子で、瑠哀が顔を出しても瞳を上げただけで、なにも言わなかった。

 その側にいるユージンは口を尖らして、泣きそうな顔をしている。



「ユージン、おじいちゃんの所に言って、昨日のことを謝ってらっしゃい。

おじいちゃんは、とてもユージンのことを心配していたわよ」



 ユージンは嫌だというふうに眉をきつく寄せる。

 瑠哀は微笑んで、ユージンの頭の優しく撫でた。



「おじいちゃんわね、ユージンとママンをとても心配しているわ。

彼は決してユージンを怒らないわよ。

彼に謝りに行かなきゃ。

ユージンはおじいちゃんに怪我をさせたから、きちんと誤らなきゃいけないでしょう?

おじいちゃんに、昨日はごめんなさい、って言わなくちゃ。

ね?」



 瑠哀はユージンの目を覗き込んで、ね、ともう一度言う。

 ユージンは瑠哀に押されて、小さく頷いた。



「いい子ね。じゃあ、行っておいで」



 そっとユージンの背が押され、ユージンは歩き出した。

 一度、瑠哀を振り返ったが、優しく微笑まれ、うん、と頷いて部屋から出て行った。
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