瑠哀 ~フランスにて~
「そうかしら?

私は、あなたの責任だと思っているわ。

彼だって、彼なりにユージンのことを気にかけている。

心配して、彼の為に何ができるか考えている。

だったら、あなたはどうなの?

ここに来てから、あなたはユージンに何をしてあげたの?

毎日、毎日、自分の心配ばかりして、

ユージンに大丈夫だよ、と言ってあげたことがあるの?」


「…………大丈夫じゃ…ないでしょう!!

私は――狙われているんです。

どこが、大丈夫なんですがっ……?!」


 セシルは涙を流しながら、瑠哀に言い返した。


「ユージンだって、狙われているわ、なにも、あなただけじゃないでしょう。

あなたはユージンに、男の子は泣かない、と言ったようだけど、

あなたは女だから泣いてもいいの?

ふざけないで。そんなのは、あなたの勝手ないい分だわ。

悲しい時、辛い時、誰にでも泣きたい時がある。

女だから泣くことができるなど、自分を養護するために作り上げた戯言だわ」


 瑠哀の語調は激しく、突き刺さるほど厳しかった。


「あなたは一人の女である前に、母親なのよ。

救けを求めて手を伸ばしている子供がいるのに、

どうして何も見ていない振りなどできるの?

一番、無防備な子供を無視して、なぜ、自分一人だけが逃げられると思うの?」

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