瑠哀 ~フランスにて~
「あなたには、わからないわ―――っ!!」



 セシルがバッと顔を上げて、声を荒立てた。

 首を激しく振って、涙をボロボロと流し出す。



「あなた…なんかに、わからないわ!!

狙われた…ことなど、ないくせに―――。

大きなことを言わないで―――!」

「わからないわ、そんなもの」


 瑠哀は冷たく言い放つ。


「守る術も持たない小さな子供が苦しんでいるのに、

自分の心配しかできないような人間の気持ちなど、判りたくもないわ。

今のあなたを見ていると、

マーグリス氏があなたにここから出て行くよう言った気持ちが、よく判る。

今のあなたに、ユージンなど必要無い。

ここが怖かったら、さっさとここから出て行くべきだわ。

ユージンは、マーグリス氏が責任を持って面倒をみてくれる」

「なっ―――!?なんてこと………!!

あなたまで、私からユージンを引き離そうとするなんて――――。

ひどいっ………!!」



 セシルはワァッと肩を揺らして泣き崩れた。
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