瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀はその髪に優しくキスをして言う。


「あなたも、もっと大きく出るべきよ。

マーグリス氏があなたにここから出ていけと言った時に、言い返せば良かったのに。

『私はあなたの息子を幸せにした。

そして、彼の子供も、誰よりも愛している。

あなたがあげなかったものを、私が彼らにあげたんだ。

一人の人間も幸せにできなかった人間が偉そうなことを言うな。

私達を引きとって、幸せにしてみろ。

そうしたら、少しはその文句に耳を貸してもいい』―――ってね」


 セシルは瑠哀の大らかな明るさと強さに、プッと少しだけ吹き出した。


 瑠哀も一緒に笑い出す。






 傍で見守っていた朔也とピエールは互いの顔を見合う。


「ルイは強いな。だから、とても優しい」

「ああ。そして、とても激しい。

その激しさが皆を引き込んで行く。

皆を熱くする。

ルイの暖かさに皆が引き寄せられる。

―――すごい娘だ。

俺……本気になりそうだ」


 ピエールはその最後の言葉にフッと笑う。


「なりそうだ――じゃなくて、最初からなっていた、の間違いじゃないの?」


 朔也はポカンとした。すぐに軽く吹き出して、もう一度、瑠哀を見やる。


「そうかもしれない」
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