瑠哀 ~フランスにて~
 横のシャワー室からだった。



 バタン、とドアを蹴破るようにして入って行く。

 そこで―――、思わず身をすくめて、硬直した。



 目の前に、髪の長い女の子がシャワーの付け根からぶら下がっている。

 その上にシャワーの水がザーザーと降り注ぎ、半ば開いているうつろな目が、その水で泣いているかのように見える。



『あっ―――!!』


 瑠哀は両手を口に当て、悲鳴を呑み込んだ。



 泣きたくないのに、激しい痙攣が体を揺すって止まらない。

 目が離せない。背けようとしても、そこから目が離せなかった――――



 まだ、若い女――少女。

 首に細い紐のようなものが吊るされている。

 靴が半分脱げて、床に落ちていた。



 顔に殴られた跡がある。

 切れた口に、もう、すでに凝固しかかっている赤黒い血が、こびりついていた―――――
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