瑠哀 ~フランスにて~
『―――ルイっ!…一体、なにを――――?!』



 朔也はシャワー室に飛び込んできて、唖然として立ち止まる。

 服も脱がずにルイがシャワーを浴びているのだ。



 ドアも閉めず、ただ、空ろな表情をして飛び散る水を眺めている。



――――つめた……。



 近くに寄ると、しぶきがピシャピシャと跳ね、その水は真水だった。

 いくら夏とは言え、水をかぶるほど暑くはない。



 こんな冷たい水をいつまでもかぶっていたら、瑠哀の体温が下がってしまう。


 朔也は瑠哀を無理矢理そこから引きずり出し、肩を揺すって瑠哀の名を呼んだ。



 その顔を見て、ハッと顔色を変える。


『泣いているの、ルイ……?』

『……はな…して』



 瑠哀が迷惑そうに朔也の手をよけようとする。

 朔也はその腕を掴んで瑠哀を引き寄せた。



『ルイ、何があった?何があったんだ?』


 朔也は叫ぶ。
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