瑠哀 ~フランスにて~
 朔也は、そうか、と呟いて、指を顎に当て考え込む。


「どうしてルイは食べないんだろうか。

それに、寝ないのは、眠れないからかな」

「さあ。それは本人に聞いてみないと判らないよ。

ただ、もう一つ言えることがある。

ルイの顔つきが変わって来ている。

時々、ものすごい鋭い目つきをして、全身の毛が逆立つほど空気が震える時がある。

あれは、戦鬼の形相に近いね。

本能的に戦っている、って感じだった。

神経を研ぎ澄ますから、他のことは考えたくないんじゃないの?」


「それは…?!――君の眼識には恐れ入るな」


 朔也は思わず驚嘆した。


「どういたしまして」


 ピエールは気取って頭を軽く下げるようにした。


「だったら、尚更、ルイを一人にしておくのは危険だな。

いつ倒れてもおかしくないこの状態で、あのケインとやり合うルイは痛々し過ぎる。

さっきの様子からいっても、よほどひどいショックを受けたんだと想像できる。

ここに戻って来たルイは、魂が抜けていた。

俺など、見えていなかった―――」
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