瑠哀 ~フランスにて~
「そんなことを言うものじゃないよ。

俺達は、君が無事で良かった、と思っている。

それが君でなくて、本当に良かった、と思っている」

「………あり、がとう。心配をかけて、ごめんなさい―――」


 瑠哀は朔也の腕を離れ、静かな微笑みをみせた。


「もう、大丈夫。ありがとう」

「ルイ、俺がついている。

フランス語を話せない振りをして。

できるね?」


 瑠哀は朔也を一瞬見返す。


 朔也は真剣な顔をして頷いた。


「……わかった」


 瑠哀は瞳を閉じ、静かに頷き返した。
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