瑠哀 ~フランスにて~
Part 8
朔也はうっすらと瞳を開けた。
誰かが向こうで立っている気配を感じ、ハッとして目を開く。
向かいの椅子に眠っているはずの瑠哀がいない。
驚いて起き上がりかけ、その視界の向こうに瑠哀が立っているのが見えた。
昨日のあの事件があってから、朔也は瑠哀の部屋に泊まると言って、簡単にまとめた自分の荷物を持って瑠哀の部屋に入り込んできた。
瑠哀は困ったような顔をして、今度は一人で出歩かない、と朔也に伝えた。
朔也はそれを聞かず、瑠哀の部屋にいる以外は眠るつもりはない、と言い返した。
瑠哀は更に困った顔をして、小さく溜め息をこぼしていた。
だが、今の朔也にそんなことを構っている暇はなかった。
事態は想像以上に切迫していた。
初めは、瑠哀がただあの少女に同情していいただけだと思っていた。
だが、瑠哀は、あれは自分だ、と言う。
ケインの狙いは、瑠哀になったのだ。
その攻撃がユージンから逸れたことは良かったが、それと引き換えに、あいつの憎悪と怒りが真っ直ぐ瑠哀に向けられることになった。
あんなきちがいじみた男と瑠哀をやり合わせるわけにはいかない。
本当なら、瑠哀を無理矢理引きずってでもパリに連れかえる所なのだが、瑠哀がそれを許さないのを朔也達は知っている。
あの揺るぎ無い真っ直ぐな瞳が、絶対に手を引かない、と言う意思を物語っているからだ。
誰かが向こうで立っている気配を感じ、ハッとして目を開く。
向かいの椅子に眠っているはずの瑠哀がいない。
驚いて起き上がりかけ、その視界の向こうに瑠哀が立っているのが見えた。
昨日のあの事件があってから、朔也は瑠哀の部屋に泊まると言って、簡単にまとめた自分の荷物を持って瑠哀の部屋に入り込んできた。
瑠哀は困ったような顔をして、今度は一人で出歩かない、と朔也に伝えた。
朔也はそれを聞かず、瑠哀の部屋にいる以外は眠るつもりはない、と言い返した。
瑠哀は更に困った顔をして、小さく溜め息をこぼしていた。
だが、今の朔也にそんなことを構っている暇はなかった。
事態は想像以上に切迫していた。
初めは、瑠哀がただあの少女に同情していいただけだと思っていた。
だが、瑠哀は、あれは自分だ、と言う。
ケインの狙いは、瑠哀になったのだ。
その攻撃がユージンから逸れたことは良かったが、それと引き換えに、あいつの憎悪と怒りが真っ直ぐ瑠哀に向けられることになった。
あんなきちがいじみた男と瑠哀をやり合わせるわけにはいかない。
本当なら、瑠哀を無理矢理引きずってでもパリに連れかえる所なのだが、瑠哀がそれを許さないのを朔也達は知っている。
あの揺るぎ無い真っ直ぐな瞳が、絶対に手を引かない、と言う意思を物語っているからだ。