瑠哀 ~フランスにて~
『―――昨日のこと、怒っているのかな』


 青年は困ったような顔をした。


『ピエールも悪気があったわけじゃないんだ。

ただ、たまに行き過ぎることがあって……。

まだ、ピエールに腹を立ててる?』

『――いいえ。

私も、初対面なのにでしゃばり過ぎた、と思っていましたから』

『君は悪くないよ。

良かった、君が怒ってなくて。

これから、ピエールに会ってくれないかな』

『今から、ですか?』

『うん。もし、今後の予定がなければ、の話だけど』

『予定はありませんけど――』

『じゃあ、いいかな。

ピエールに知らせなくちゃいけないから、ちょっと待ってて』


と言いながら、青年はポケットから携帯電話を取り出し、手早くダイアルを押す。


 瑠哀を見つけたのどうのと話しているようで、何度か頷いていた。


『ピエールも君に会えるのを楽しみにしてる、って』


 青年は携帯電話をポケットにしまい、行こう、と瑠哀を促した。
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