瑠哀 ~フランスにて~

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 ピエールが無言で、座っている瑠哀の顎を上げさせ、

側に置いてあった救急箱から消毒液を取り出し、

首に付け出した。なにかのシートを半分に折り、首に貼り付けて行く。



 瑠哀は、その間、何も言わず、動きもせず、ピエールにされるままにそこに座っていた。


 ドサッと、なにかが落とされる音がし、そっちに目線だけを向けると、

のされたケインが後ろで縛り上げられ、朔也が寝室を出た所に投げ捨てたのだ。



「サーヤ、手を貸して。包帯を巻くから」


 静かに言うピエールに、朔也は無言で近づいて来た。

 瑠哀の髪を取り、それを持ち上げて、首の周りを空けるようにする。


 ピエールがそこに包帯を巻き出した。


「―――手当て…、どうもありがとう」


 包帯を巻き終えたピエールに、瑠哀がポソリと礼を言った。


 ピエールはその瑠哀を見ただけで、何も言わない。


「ごめんなさい」


 瑠哀はそれだけを言って、立ち上がりかけた。


 朔也が髪を少し引っ張り、


「どこに行くんだ?」

「髪留めを取りに」

「そこに座っているんだ。

俺が取りに行くから。

どこにあるんだ?」

「ベッドのサイドテーブルの上に」
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