瑠哀 ~フランスにて~
 刑事達が倒れているケインを見て、バタバタと駆け寄って来た。


「奴が危害を加えませんでしたか?」

「彼女が切られた。

だが、手当ては済んでいる」

「そうですか。―――おい、連行しろ」


 その刑事が、そこにいた他の刑事に言い付けた。

 ケインが運び出されて行き、刑事が瑠哀のところに歩いて来た。


「大丈夫ですか?」


 瑠哀はその目を向けただけで、何も言わなかった。


 朔也がわざとそれを日本語で言い、瑠哀が日本語で話し返す。


「大丈夫だそうです。

ケインはリチャードのところに匿われていた、と言っています」


「やはり、あの坊やが手引きをしてたのか」


 刑事が嫌そうに顔を歪めた。それを見て、瑠哀が口を開いた。


『ケインがいなくなったのを知れば、リチャードは必ず行動を起こすわ。

頭がいいだけに、この結末を簡単に予想できるはず。

ケインが逮捕されたとなると、リチャードの命運も尽きてしまうから。

もう、逃げ隠れはできないわ』


『何をしたんだ?』
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