瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀はなんのためらいもなく、それをきっぱりと言い切った。


 あの事件で瑠哀が標的になったと知っているのに、自分のガードを減らしてまで、

自分の身を危険にさらす。

 それが、ただの危険ではない、と一番に知っている瑠哀が、平気で自分を犠牲にする。


 それも、ユージン達を思って。


 朔也はやるせなく長い溜め息をついた。


「サクヤ、さっきはありがとう。

あなたがケインを蹴り飛ばしてくれるなんて思ってなかった。

それと―――、ごめんなさい…」

「ピエールにも謝っていた。

どうして、俺達に謝るんだ?

俺達が怒っているのは、君が自分自身を大切にしなさ過ぎるからだ。

あんな奴に触れさせまでして、君が汚されるのを、

俺達が黙って見ていられると思ったのか?」

「そんなことなど、いくらでも耐えられる。

どんな屈辱でも、気になどしないわ。

どんな危険だって、怖くなどない。

怖れているのは―――、あなた達を失うこと…。

私のせいで、あなた達が傷つくこと。

あなた達に出会えて良かった。

でも……、出会わなければ良かった。

ごめんなさい…。

だから――、私を一人にして」
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