瑠哀 ~フランスにて~
「離して!―――いやっ――!」


 腕を押さえつけられないように、激しく振り回し、それと同時に足もばたつかせる。

 思うように瑠哀を押さえつけられなくて、ケインの形相が一気に変わった。


 カッと、一瞬、目を見開かせ、その勢いで瑠哀を殺しかねない形相を露にしたのだ。


「―――!!」


 殴られる―――と一瞬に判断した瑠哀が、バッと、咄嗟に堅く顔を庇った。


 その腕に、ガツッ、と鈍い拳が振り落とされた。


「…あぁっ――!!」


 だが、こんな男に乱暴されるつもりはない。

 死んだって、絶対に、降服などしない。


 瑠哀の猛烈な抵抗と、ケインの格闘が続いた。

 だが、どんなことになっても、絶対に降服などしない。

 こんな男に組み伏されるなど、絶対に御免だ。



 ズドンッ―――!!



「――っうぁ――!」


 一瞬、ケインの体が引きつったように飛び上がった。


 すぐに、ドサッと、重い体が瑠哀の上に伸し掛かって来る。


「な、に……?」

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