瑠哀 ~フランスにて~
「ピエール――」


 朔也が口を挟んでピエールを止めるようにしたが、ピエールはそれを無視する。


「一人で旅行とは優雅だね。

パパにでも頼んで、お金を出してもらったのか?

欲しいものがあったら、おねだりでもすればパパが買ってくれるんだろう。

僕を買えばいいおもちゃができる」



 これは侮蔑だ。それも強い嫌悪と軽蔑が混じっている。

 その冴え冴えと光っている瞳は、瑠哀など見ていない。

 ただ、近寄って来る者を見下し蔑んでいる。



「それとも、僕を誘惑してみる?その顔と体で、男に言うことを聞かせることは簡単だろう。

パパがいなくても、君一人で財産を作ることぐらいお手のものだと思うが」

「私がそういう女だ、と?」

「初対面で優しい金持ちは苦手、だったんじゃなかったのか?

それを言うということは、君の回りに寄ってくる男達がいると言うことだ。

違うか?」



 ここまで軽く見られ、馬鹿にされて、腹が立たないはずはなかった。

 でも、ピエールの本心を覗いたようで、瑠哀はそっちのほうに興味を引かれていた。



「失礼な言い方ね。普通なら、怒って帰ってしまうんじゃない?」

「帰りたかったから、帰ればいい」


 ピエールは冷たく言い放つ
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