瑠哀 ~フランスにて~
 はっ、とリチャードの高笑いががその場に響くと共に、

瑠哀に押しつけていた銃口をそのまま朔也の方に向けた。


「ダメよっ―――!!」


 まさに、リチャードがその火を吹き放とうする刹那、瑠哀がその間に割り込んだ。

 リチャードと瑠哀が互いにその拳銃を取り合いながら、

銃口があっちに向いたりこっちに向いたりと。



「ルイっ」

「サクヤ、来ちゃダメ―――」

「何をするっ!―――邪魔だ。どけっ」

「きゃっ―――!?」


 ガツッ、と思いっきり腕を払ったリチャードが拳銃の腹で瑠哀の頭を殴り付けた。

 殴られた反動で瑠哀が真っ直ぐ海の中に落ちた。


 バシャッ――――!


「ルイっ――!!」

「動くなっ」


 飛び込みかけた朔也の足が一瞬止まる。


「動くな」


 ウィーン、と後ろ手に器用にリチャードがまた舵を取り、ボートが動き出した。

 すぐに、打ち上げる波に逆らいながら急速にスピードを上げ出して行く。


「動くなよ」



 本気で朔也を撃ち殺しかねないそのリチャードを横目で睨みながら、

朔也はなんの躊躇いもなく、バッと、

足を蹴り上げてそのまま海に飛び込んだ。


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