瑠哀 ~フランスにて~
「なに――っ!?」


 くそっ、と吐き出して、リチャードの持っている拳銃が朔也の飛び込んだ方に狙い定められた。


 バン、バン、バンッ―――!


 続け様に放たれた銃弾が飛沫を上げ、水中深く突き進む。


 カチッ、カチ、カチッ。


 銃弾が切れ、それに気付いたリチャードが苛立ったように拳銃を海の中に放り投げた。


 サッと、見渡した視界の端々に海上警備隊の船が幅を縮めて追い詰めて来た。


 もう、逃げ去った瑠哀や朔也のことなど構っている暇はない。

 逃げ切れる所まで逃げ切るまで。


 ウィーン、と唸りを上げ、これ以上加速できないほどボートを突進させていた。


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