瑠哀 ~フランスにて~
 ガバッと、水上に顔を出して辺りを探す。

 まだほんの少ししか離れていないはずだった。

 だが、瑠哀の姿など一向に見当たらない。


 大きな息を吸い込んで、朔也はもう一度海の中に潜り込んだ。



 真上から照らす太陽の日差しが水中にも差し込んで、明るい青色の世界が広がって見えた。

 ゆらゆら、と長い髪が海中でも揺れていて、ゆっくりと海底へと沈んで行く瑠哀の体が目に留まった。



 朔也はそこまで泳いで行って、しっかりと瑠哀の腕を掴まえる。

 一瞬、瑠哀を見付けたことと、自分の腕の中に戻って来たその体を感じている安堵に、

朔也の顔に微かに嬉しそうに綻んだ。



 瑠哀を抱え、真っ直ぐ水上を目指し上がって行く。


 ガバッと、もう一度、水上に顔を出した。

 瑠哀の顔を上げさせてみると、息をしていないのか、

気絶しているだけなのか、動きが全く見て取れない。


 朔也の浮かんでいる前方数メートルほどにプカプカと浮き輪が浮いていた。

 少し顔を上げると、すぐ近くに朔也達を保護しに来たであろう船が停止していて、

そこから数人の人影が浮き輪を投げ、支え棒を差し出しているのも目に留まった。



 瑠哀の顔を引き上げながら浮き輪に泳ぎ着いた朔也が、ゆっくりと引き上げられて行く。


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