瑠哀 ~フランスにて~
「―――聞きたいことは、それだけ?」

「――いや」



 ピエールは静かに立ちあがり、瑠哀の方に歩み寄った。

 手を伸ばして瑠哀の髪を梳きながら、もう片方の手で瑠哀を胸の中に抱き入れた。



「ピエール――?」

「僕は、抜け殻なのかな」


 瑠哀はそっと手をピエールの背中にまわした。


「そうは、思わないわ。

もし、あなたが抜け殻だったら、こんなに暖かいはずはないもの。

あなたの体温を感じてる。心臓の鼓動も聞こえる」


 ピエールはふっと微笑んで、


「……君は、思った通り、他の女と違っていた」

「よく、変わってる、って言われるわ」


 ピエールは腕を解いて、笑いながら瑠哀の額にキスをした。


「君に会えて良かった」



 今度は、心から言っているようだった。




 少々、風変わりな挨拶だったが、どうやら、瑠哀はパリで新しい友人ができたようである。
< 30 / 350 >

この作品をシェア

pagetop