瑠哀 ~フランスにて~
-3-
「ルイ、夕食を一緒にしたいが、これから人に会わなければならないんだ」
「気にしないでください。私もそろそろ帰らなければならないから」
ピエールは片眉を上げて、
「ルイ、その他人行儀みたいな言葉遣いは好きじゃない。
僕は君に敬語を使われるほど、年をとっているとは思ってないんだ」
「…次からは、気をつけるわ」
瑠哀は肩をすくめてみせた。そうして、テーブルの上のバッグに手を伸ばしながら、
「あまり遅くなるといけないから、もうそろそろ帰らなきゃ」
「じゃあ、俺が宿まで送って行こう」
椅子から立ち上がった瑠哀を見て、朔也は壁から身を起こすようにした。
「そんな、わざわざ気にしないで。
外もまだ明るいし、私の泊っているモーテルは、街に近いの」
「それでも、もう夜だから」
「ルイ、遠慮することはないよ。サーヤは暇だから」
「それは、ひどいな」
「でも、特別の用はないんだろう?
―――ルイ、明日の朝、目が覚めたらここにおいで。
朝食を一緒にしよう。その後、好きなところに連れて行ってあげるよ」
随分と気に入られたものだが、瑠哀はなんだかそこまでしてもらうのに、微かな罪悪感があった。
「ありがとう。
でも、いつ起きるか判らないから、私を待っていないで欲しいの。
昼前には顔を出すわ」
「君は謙虚だね。
一ヶ月しかいないんだから、楽しむべきだよ。
君を待ってるからね」
なにか抵抗し難いものを感じて、瑠哀は、うん、とためらいがちに頷いた。
「じゃあ、行こうか」
瑠哀は朔也と一緒にピエールのギャラリーを後にし、モーテルへと歩き出す。
「気にしないでください。私もそろそろ帰らなければならないから」
ピエールは片眉を上げて、
「ルイ、その他人行儀みたいな言葉遣いは好きじゃない。
僕は君に敬語を使われるほど、年をとっているとは思ってないんだ」
「…次からは、気をつけるわ」
瑠哀は肩をすくめてみせた。そうして、テーブルの上のバッグに手を伸ばしながら、
「あまり遅くなるといけないから、もうそろそろ帰らなきゃ」
「じゃあ、俺が宿まで送って行こう」
椅子から立ち上がった瑠哀を見て、朔也は壁から身を起こすようにした。
「そんな、わざわざ気にしないで。
外もまだ明るいし、私の泊っているモーテルは、街に近いの」
「それでも、もう夜だから」
「ルイ、遠慮することはないよ。サーヤは暇だから」
「それは、ひどいな」
「でも、特別の用はないんだろう?
―――ルイ、明日の朝、目が覚めたらここにおいで。
朝食を一緒にしよう。その後、好きなところに連れて行ってあげるよ」
随分と気に入られたものだが、瑠哀はなんだかそこまでしてもらうのに、微かな罪悪感があった。
「ありがとう。
でも、いつ起きるか判らないから、私を待っていないで欲しいの。
昼前には顔を出すわ」
「君は謙虚だね。
一ヶ月しかいないんだから、楽しむべきだよ。
君を待ってるからね」
なにか抵抗し難いものを感じて、瑠哀は、うん、とためらいがちに頷いた。
「じゃあ、行こうか」
瑠哀は朔也と一緒にピエールのギャラリーを後にし、モーテルへと歩き出す。