瑠哀 ~フランスにて~

-4-

「ルイっ!」


 屋敷の入り口にある大きな扉を一歩超えると、

ピエールが真っ直ぐに瑠哀の前に駆け込んで来た。

 そのまま腕を伸ばして、瑠哀を抱き寄せる。



「ルイ、無事で良かった」

「ピエール…」

「ルイ、心配させるんじゃない。何度言ったらわかるんだ」

「ごめんなさい、ピエール。ごめんなさい……」



 傷を庇ってか、瑠哀を抱き締めてくれている腕が優しい。

 それでも、その心配した気配が感じられるほどにしっかりと抱き締めている腕の強さ。



 ずっと、優しい朔也に抱き締められて、

その暖かさに自分のいる居場所を改めて自覚し、

そして、やっと力を抜くことができたように安堵した瑠哀から、

今までの緊張が解けていた。



 それでも、改めて、陸地に上がり、

今ここでピエールに抱き締められて、二人の元に戻って来たのだ、

という安心が熱く心を震わせる。



「ピエール…、ごめんなさい。ごめんなさい、心配をかけて……――」


 瑠哀もピエールを抱き締め返していた。



「心配をかけ過ぎだ。

もう、金輪際、君の言うことなど聞いてあげないと思うんだね。

何を言っても、連れ帰る」


「ごめん…なさい、ピエール。

心配を、かけて、ごめんなさい…」


「かけ過ぎだ」

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