瑠哀 ~フランスにて~
 少し怒った感じのする口調が、いつものように冷たくても、

本気で瑠哀を心配してくれていたピエールの気持ちが、

痛いほど瑠哀に伝わって来た。



 瑠哀が少し力を入れて、もう一度、ピエールを抱き締め返して行く。



「……ピエール。

――もう一度会えて、良かった…。

ピエールにも、サクヤにも、もう二度と会えないかもしれない…って――。

ピエール…、ここに、戻ってこられて、本当に…良かった」



 ふっと、強く抱き締めていたピエールが少し体を起こし、瑠哀を見下ろす。

 そのピエールを見上げた瑠哀の額に顔を寄せ、しっかりと口唇を押し当てた。



「無事で良かった、ルイ」


「ごめんなさい、ピエール。たくさん、心配をかけて…」



 また、傷に触れないよう、それでもしっかりと瑠哀を抱き締めて行くピエールは、

顔を少し上げその視線をすぐ横に向けた。



「良くやった、サーヤ」


「もちろんだよ。俺達の大切なお姫さまだ。

どんなことをしても、絶対に救け出す。

そうじゃなきゃ、騎士の役目もままならない」



 笑みを見せ、それを口に出す朔也に、ピエールもふっと笑っていた。


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