瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀がピエールの言葉を責めるようにする。

 感情など微塵もなく、きっぱりと切り捨てて、

見捨てているピエールの冷酷さは、容赦など決してしない。



 瑠哀が困ったようにピエールを見上げ、その横で霞月がそこで静かに口を挟んで来た。



「その話はまた後で。

今は、ルイの手当てが必要だから。

応急処置をしてもらったけど、きちんとした手当てが必要だ。

それに、濡れているから風邪を引いてしまうかもしれない」



 その落ち着いた瞳がマーグリスに向けられ、マーグリスは一度大きく頷いてみせた。



「すぐに、医者を呼びましょう」



 横のセシルに、自分のことはいい、とその手を押し返し、

セシルを早く向こうに行かせるようにする。

 セシルも真剣な面持ちで頷いて、すぐに奥に駆けて行った。



「―――…ルーイ…」



 その場で、ポソッとした呟きが出た。


 瑠哀はマーグリスの腰の後ろからほんの少しだけ顔を出しているようなユージンを見つけ、

そこで、優しい微笑みを浮べてみせた。

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