瑠哀 ~フランスにて~
「じゃあ、ルーイは?

…ルーイ、おでこが、あかくなってるよ…。

ルーイは、だいじょうぶ…?」


「もちろんよ。

全然、平気なんだから。

これはね、さっきまでのだから、この下はもう赤くないの。

私は大丈夫よ、ユージン。

もうね、全部、大丈夫になったのよ。

これで安心してゆっくりと眠れるでしょう?」



 変わらずの優しい微笑みを浮べ、

瑠哀がユージンにその微笑み以上の優しい労りの口調でゆっくりと聞かせて行く。



 瑠哀がにこにこと笑ってくれているので、ユージンもその瑠哀を見上げながら、

その顔に嬉しそうな、そして、子供らしいその笑みを浮べていた。



「さあ、まず、部屋に行って、手当てをしなくちゃ」

「ルイ、子供に嘘をつくんじゃない」



 瑠哀を心配して、瑠哀だけを心配している朔也と、

瑠哀の態度に、「まったく反省が足りない」、

と完全に瑠哀の父兄化しているピエールの両方に挟まれながら、

半分笑みを浮べかけたような、半分困ってチラッと横を見上げているような、

そんな少々複雑な顔で瑠哀は歩き出していた。


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