瑠哀 ~フランスにて~
 朔也は、また、優しい微笑みを浮べた。


「…サクヤ、ごめんなさい。――ごめんなさい」

「誤らないで、ルイ。君は何も悪くないんだから。

俺は大丈夫だよ。

そんな風に心配しないで」


「…ごめんなさい、サクヤ。ごめんなさい――」



 ギュッと、瑠哀が朔也の手を握り締めた。



 鎮静剤のせいで、今ここで眠りたくないのに、

瑠哀を見上げている朔也の意識が朦朧とし出してきていたのを感じながら、

瑠哀が握っている手を握り返し、その手をゆっくりと自分の口唇の方に持って来る。



 そして、その手にそっと口唇を寄せた。



「――ルイ。心配しないで。

俺は大丈夫だよ――」

「サクヤ……。――ごめん、なさい……。

ごめんなさい……」



 意識が薄れ出してきていた。

 瞼が重く伸し掛かって来るようだった。

 はあ、と朔也は溜め息を吐き出しながら、もう一度、瑠哀の手にキスをしていた。
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